高周波熱凝固(RF)・
パルス高周波(P-RF)について
年単位での除痛を目指していきます
ステロイド剤と局所麻酔薬とを併用する通常の神経ブロック治療では、徐々に痛みが緩和されます。これに対して、治療を1～2ヶ月継続しても相変わらず痛みが残る場合や、激痛が生じた場合には、高周波熱凝固を試すことも選択肢の1つです。
当院では、この治療にトップ社が製造販売している「トップリージョンジェネレーターTLG-10」という機器を使用し、高周波電流によって神経を熱変性させることで、長期間にわたって痛みを軽減します。
高周波熱凝固（RF）
90℃で120秒間、高周波電流により熱で神経を変性させて痛みを抑えます。
ただし、遠心性神経（運動神経）には使えません。
痛みのある部位に応じて、半年から1年前後の効果が期待できます。
パルス高周波（P-RF）
42℃で300秒間、高周波電流を間欠的に与えます。
温度が低いため、遠心性神経にも使えます。
いずれも、通常の神経ブロック治療に追加することが可能です。
透視下ブロック
レントゲンの事を「透視」と呼びます。体の構造を「透視」しながら、正確に神経ブロックする手法です。
レントゲンを見ながら針を刺すことにより、正確で効果の高い神経ブロックが可能です。
脊椎手術後でも、固定具（ロッド）を避けて治療できます。
高周波熱凝固法とは
局所麻酔薬を使用する通常の神経ブロックは、効果が長く続かないのが難点です。
このため、ブロックの効果を持続させるための手段として、高周波熱凝固法が考案されました。
麻酔薬を用いる神経ブロックと同様に、神経の近傍に針を刺して施術します。具体的には、針の先端から出力される高周波電流で熱を発生させ、神経を構成しているタンパク質を変性により凝固させます。これによって、長期にわたって神経の働きを抑制することが可能になるのです。通常の神経ブロックでは、麻酔薬によって神経を一時的に麻痺させるだけなのに対し、高周波熱凝固法では、変性した神経が再生するまで効果が維持されます。再生までの期間は人それぞれで、おおむね数ヶ月から1～2年とされています。
高周波熱凝固法の適応
三叉神経痛
眼窩下神経（すなわち、三叉神経の第二枝の末梢枝にあたる神経）に対する高周波熱凝固は、外来で施術します。
ガッセル神経節および上顎神経・下顎神経への高周波熱凝固については、レントゲンで体内の状態を確認しながら実施します。これは非常に専門性の高い治療で、施行施設が少ないです。
腰痛・背部痛
腰背部における痛みには、脊髄神経後枝内側枝（脊髄から出る神経の枝）が関与して生じるものがあります。その場合、高周波の熱で該当する神経を焼灼し、腰背部痛を抑えることができます。レントゲンと電気刺激とを併用し、神経の位置を確認しながら実施する治療です。
帯状疱疹後神経痛
帯状疱疹が原因で神経痛が続く場合、神経痛に関与する脊髄神経に対して神経根高周波熱凝固法を実施する場合があります。
その他
がんが原因の痛みなどは高周波熱凝固法で緩和する場合があります。
合併症
通常の神経ブロックと同様に、感染症および出血の危険性があります。また、凝固した神経が関与する部位に痺れが発生する場合があります。
神経根パルス高周波とは
- 注射をしても3日くらいで元に戻ってしまう・・・
- 神経ブロック注射って、一時的な痛み止めでしょう？
- 仕事が忙しくて、頻繁に通院できない。
そんな経験はありませんか？
より長期間の痛み治療として「パルス高周波」があります。
レントゲンを見ながら、正確に神経にアクセスし、「高周波刺激」を流す事により長期間の痛み治療が可能です。
神経根パルス高周波法(PRF: pulsed radiofrequency)は、42℃以下の低温で間欠的に高周波パルスを発生させて電場を形成し、神経に作用して痛みを抑制する方法で、合併症も発生しにくいと言われます。
神経根パルス高周波法では、500kHzの高周波電流の出力（20ミリ秒）と休止（480ミリ秒）のサイクルを2回/秒の頻度で実施して電磁場を発生させ、痛みを緩和します。施術時の温度が42℃以上になることはなく、その点が高周波熱凝固法とは異なる点の1つです。つまり、熱で神経組織を変性させるのではなく、主に電磁場による作用を利用しています。
神経根パルス高周波の適応
高周波熱凝固法では対応できない胸腹部の帯状疱疹後神経痛、脊髄圧迫骨折などが原因の根性肋間神経痛
当院における時間的・人的な制約と、入院設備がないことなどの諸事情で、現在、神経根ブロックでも効果が認められて再発する腰下肢痛にのみ施術いたします。
注意が必要な方・受けられない方
- 造影剤や局所麻酔薬にアレルギーがある方は、施工方法を工夫する必要があります。その旨を医師にお伝えください。
- 抗凝固薬や抗血小板薬などの血液を止まりにくくするお薬を服用していると、上記の治療を受けられない場合があります。ほとんどの場合は大丈夫ですが、心臓カテーテル治療直後で、2剤併用（DAPT）を行っている場合は施行できない可能性があります。該当する方は、事前にお知らせください。
- 施術後、一時的に足腰の筋力が落ちる場合があり、急に立ち上がると力が入らずに転倒する恐れもあります。看護師が声をかけるまで、立ち上がらずにいてください。
- 力が入るようになるまで数時間かかる場合もあるため、時間に余裕をもって受診してください。
神経根パルス高周波の流れ
- レントゲン透視下で実施します。通常の神経根ブロックと同様に、胸部や腰部への施術であればうつ伏せ（水平になるように身体の下に枕を入れます）で、辛いようであれば痛みのある部位を上にして斜めの体位を取ります。頚部への施術についても、痛みのある部位を上にした斜めの体位です（斜位法）。
- ふくらはぎに、対極板を装着します。
- 皮膚を消毒し、針を刺す部位に痛み止めとして局所麻酔薬をしみこませます。
- レントゲンで確認しながら、スラスター針と呼ばれる電極用の針を皮膚に刺し、神経根ブロックと同一の神経根が脊椎から出る場所まで、そのまま針先を誘導します。
- 神経根であることを確認するために、造影剤を注入します。場合によっては、もともと痛みがあった部位に放散痛が生じます。0.3V以下の低電圧で刺激を加える場合があります。それまで痛みのあった部位に痛みが走る「再現痛」や、対象神経が支配する筋肉がピクピク動く「攣縮」を確認します（当院では、実施しない場合もあります）。神経根組織であることを確認するために、抵抗値を測定します。
- 局所麻酔薬の注入から数分後、パルス高周波法による施術を始めます。場合によっては、神経に沿って痛みが引き起こされたり、筋肉がパルス波に同期して収縮したりします。筋収縮自体は悪いことではありませんが、耐えられない場合は、出力を弱めるか、開始を遅らせます。当院では、この治療を360~420秒間実施します。
合併症・副作用
- 通常の高周波熱凝固法と同様の合併症が誘発される可能性があります（穿刺による出血、穿刺部痛、感染症。血管穿刺、くも膜下穿刺、神経損傷、神経炎、対極板の接触不良が原因の熱傷など）。
- 高周波熱凝固よりは発症頻度が低いものの、運動麻痺、知覚障害、筋力低下が生じる可能性も絶対にないとは言い切れません。
- 他には、通常の神経根ブロックと同じような合併症も起こり得ます。
※合併症に対する検査や治療については、保険診療の範囲で扱います。
神経根パルス高周波で
期待できる効果
電磁場によって痛みが抑制される仕組みは、完全には解明されていません。現状、1)神経細胞の微細構造が変化し、細胞機能が変化する、2)下行性疼痛抑制系を活性化させる、3)炎症性サイトカインの産生を抑制することなどが報告されています。
すぐに効果が出る人もいますが、施術の2～3週間後に効果が出る例も多く見られます。
パルス高周波は、効果に蓄積作用があり、何回かにわけての施術が必要な場合もあります。健康保険を適用するためには、パルス高周波は月1回という回数制限があります。