手汗がひどい症状は
手掌多汗症かもしれません
気温の高い空間で過ごしたり運動をしたりすれば、誰でも多かれ少なかれ汗をかきます。これに対して、高温の環境や運動とは無関係に多量の汗が出る人がいます。特に、緊張するなどストレス下に置かれたときに発汗が過剰になるようであれば、多汗症かもしれません。
多汗症は、頭部や顔、手のひら、脇の下など、発汗量が多い部位に応じて大別されます。このうち、手のひらの発汗量が過剰になるのが、手掌多汗症です。
手掌多汗症の症状
発汗量には幅があり、手が湿る程度の人から汗の滴が流れ落ちるほど多量に発汗する人まで、人それぞれです。
- 緊張すると手の発汗量が増え、汗のことに意識を取られてしまう
- 運動量や周囲温度とは無関係に手から発汗する
- 答案用紙やノートなどの紙がよれたり、書いた文字が滲んだりする
- 汗で滑ってキーボードやスマートフォンの操作がしにくい
- 人と手を繋いだり握手をしたりすることに抵抗がある
- ハンカチやハンドタオルがすぐ濡れてしまう
- 店舗で陳列された商品に触れると汗の跡が付きそうで不安
- 手にあせもができやすい、手の皮がふやけてむけやすい
- 人と食事に行くと器やカトラリーが滑りそうで不安
手掌多汗症がひどい原因
人間の意思とは無関係に、循環器や消化器、呼吸器などの器官を制御する神経系を、「自律神経」と呼びます。自律神経は交感神経と副交感神経に大別され、交感神経は活動時に優位になり、副交感神経は休息時や睡眠時に優位になります。発汗を制御しているのは、主に交感神経です。このため、交感神経が働きすぎると、過剰な発汗が生じる場合があります。もう少し詳しく説明すると、手掌多汗症では手の汗腺に異常がなく、手の発汗に関与する交感神経が活動しすぎていると考えられています。ただし、手に対する交感神経だけが過剰に作用する原因は解明されていません。
他に、副腎機能亢進症（クッシング症候群、褐色細胞腫）、甲状腺機能亢進症、肥満などによって発汗量が増える場合もあります。これらの疾患が原因で多汗になる場合、通常は手のひらなどに限局されず、全身の発汗量が増えるのが特徴です。
手汗の対策
症状が軽く、手が湿る程度であれば、アルミニウム・ローションで汗腺に蓋をするだけでも、ある程度は発汗量の抑制が可能です。多汗にはストレスが関与している場合もあるため、睡眠不足の解消など生活習慣の改善によって、発汗が抑制される場合もあります。
ただ、手掌多汗症は保険適用で治療が可能な疾患ですので、症状をなくすためにも、医療機関の受診を推奨しています。
手掌多汗症の治療方法
外用剤や内服薬を使用する保存療法に加えて、一定期間ごとに実施するボツリヌス注射やイオントフォレーシス、手汗の原因と考えられる交感神経を部分的に離断し、多汗の解消を目指す日帰り手術があります。症状の強さや状態に応じて、患者様の理解を得ながら治療方針を決定します。
手掌多汗症の日帰り手術
手のひらの多汗を根本的に治療する方法です。胸腔鏡と呼ばれる内視鏡を用いる日帰り手術で、発汗に関与する交感神経を部分的に離断します。施術時間は約20分で、麻酔まで含めて1時間前後で終わります。手術と言っても、3mm程度の小さな穴を胸部と脇の下と胸部に開けるだけで、身体への負担がほとんどありません。入院も不要で、手術の翌日になれば、ほぼ普段と変わらない生活に戻ります。手術痕も目立たないため、見た目が悪くなる心配もありません。
手術の対象になるのは、背骨の脇を縦走する胸部交感神経の一部です。手掌多汗症に対する効果はほぼ100％で、術後すぐに発汗が止まります。手術は片手ずつ実施するため、利き手だけの手術も可能です。
ただし、副作用として、大腿部や背中など身体の他の部分で発汗量が増える代償性発汗が生じる場合があります。
代償性発汗をなるべく少なくするために、本幹温存の術式を行っています。
また、稀に再発も報告されています。
当院では、手術の影響を患者様がご自身で判断できるように、手術は原則として15歳以上の患者様にのみ実施しています。15歳未満の方は、一度当院にてご相談ください。
