顔面痙攣
人は目をつかいすぎることなどで、まぶたのあたりがピクピクと動いてしまうことがあります。これを眼瞼痙攣と勘違いしているケースも多いのですが、実は眼瞼痙攣ではまぶたはピクピクと動くことは無く、目が開けにくかったり、勝手に閉じてしまったりする疾患です。
一方、初期には片側の目の周辺がピクピクと痙攣するように動き、だんだんと頬や口のほうまで痙攣する範囲が拡がっていくのが顔面痙攣で、正しくは片側顔面痙攣という病名です。
片側顔面痙攣は、人と話す際や登壇などで緊張する際に痙攣発作が起こりやすい疾患で、それ自体では特に命に関わるような重篤なものではありませんが、自動車の運転中に起こると、距離感がつかめなくなって思わぬ事故につながることや、表情がおかしくなるなどによって、人と会うのを避けるようになることもあります。
症状は顔の片側だけに起こることが特徴で、最初は目の周りだけに痙攣が起こりますが、だんだん進行してくると頬や口のまわりが痙攣するようになり、ウインクするように勝手に目が閉じてしまったり、口角が上がって表情がゆがんでしまったりすることもあります。
眼瞼痙攣も顔面痙攣も2~2.5対1程度で女性に多いのが特徴です。
顔面痙攣の原因
顔面神経は、脳の中枢部分にある脳幹というところから左右対になって枝分かれし、耳の前あたりから頭蓋骨の間にある細いトンネル状の孔を通って顔の各部へと枝分かれしていきます。
この脳幹から顔面神経に枝分かれする部分あたりには、動脈や静脈などが通っています。顔面痙攣の多くは、この血管が神経と接触することで神経が異常反応を起こして、顔面の筋肉が正常にコントロールできなくなってしまうことに起因しますが、時に該当部分にできた腫瘍や血管瘤などと神経の接触が原因となることもあります。
顔面痙攣の経過
軽症の方では、まれに自然に治まってしまうこともあるのですが、顔面神経が脳幹から枝分かれする部分はちょっとしたくぼみになっており、その部分に血管が入り込んでいる場合、自然に治癒することはありません。
当院の顔面痙攣の治療法
神経ブロック
(ボトックス注射)
食中毒の原因として知られているボツリヌス菌は、ボツリヌストキシンというたんぱく質の毒素を産生します。このボツリヌストキシンは筋肉を弛緩させる働きがあります。この作用を利用し、ボツリヌストキシンを薬剤として使用できるように加工したものがボトックス注射です。
このボトックス注射を、痙攣している筋肉に注射することでボツリヌストキシンが筋肉を動かす神経に作用し、痙攣が治まっていきます。毒素と聞くと嫌な感じをもたれる方もいると思いますが、ボツリヌス菌そのものではなく加工成分ですので、感染することもなく、使用する量も決まっていますので人体には安全です。また施術時間は数分、その後30分ほど経過観察をするだけですので、治療としては難しくなく安全であると言えます。
ただし、神経をブロックし筋肉の緊張をゆるめるため、時に表情を作りにくくなるようなこともあります。また、顔面痙攣は片側に起こるため、片側だけ顔面麻痺のようになって、左右の表情が対称にならないこともあります。
さらに、ボトックスの成分は自然に分解されていくため、数か月で効果が失われ、痙攣が再発することがあります。
3~4か月に1度は再治療する必要があり、注射を何度も繰り返すと、身体にボツリヌストキシンに対する抗体ができて、効果がだんだん持続しにくくなるといった欠点もあります。
ボトックス注射にて、4~9か月効果が持続します。
当院では一度診察した後にボトックスを発注いたします。納品後に注射にて投与します。
薬物治療
顔面痙攣は、顔面神経の脳幹からの出口周辺で血管などと神経が接触し、神経が異常興奮することで起こります。治療薬としては、神経の興奮や異常伝達を抑制する薬物が効果を発揮する場合があります。特に、抗てんかん薬で筋弛緩作用もあり、抗不安薬の働きもするクロナゼパムという薬がこの疾患に対してある程度の効果を発揮することが知られています。
ただし、この薬はその働きから副作用として、ぼーっとしてしまったり、眠くなったりすることが知られており、仕事に集中できなくなってしまうことや、自動車の運転などが危険になることもありますので注意が必要です。
こうした治療で思ったような効果が発揮できない場合や、腫瘍・血管瘤が原因となっているケースでは外科手術を検討することもあります(その場合は提携先の病院へ紹介いたします)。