帯状疱疹について
帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)による感染症です。このウイルスに初めて感染すると、水ぼうそう(水痘)を発症します。水ぼうそうが治った後もこのウイルスは身体から駆逐されることはなく、ずっと神経の奥深く、脊髄に近い場所に潜伏しています。
ずいぶん時がたってから、加齢や体調不良、ストレスなどで免疫力が低下すると、このウイルスが活性化し、神経節から末梢に向かって神経に沿って活動を拡げていきます。その際に神経に沿って湿疹などが帯状にあらわれることから帯状疱疹と呼ばれています。
帯状疱疹は神経を障害するため痛みを伴います。適切な治療を受けずにいると神経に重いダメージが残ってしまい、帯状疱疹後神経痛という疾患になります。そうなると深刻な症状が続いてしまいます。
帯状疱疹を発症したら、できるだけ早いうちに、ペインクリニックで神経ブロック治療を受けて重症化を防ぐことをお勧めしています。
帯状疱疹の症状と治療
急性期
潜んでいた水痘・帯状疱疹ウイルスが再活動を始めると、神経節という奥深い部分から末梢に向かってウイルスが活動を拡げていきます。その経路に沿って帯状に湿疹が拡がっていき、時にピリピリとした強い痛みを感じることもあります。
水痘・帯状疱疹ウイルスは、ヘルペスウイルスと同じ抗ウイルス薬が有効ですので、急性期のあまり神経にダメージが及ばない間に、急いで治療を始める必要があります。
もし湿疹に伴う痛みが激しい場合には、神経へのダメージが重なり、神経痛になる可能性が高くなるため、できるだけ早めに神経ブロック療法を受けることが大切です。神経ブロック療法は痛みを一時的に抑える鎮痛効果とともに、興奮した神経を鎮める効果や炎症を抑える効果が期待できます。また患部周辺の緊張をやわらげ、血流を促進する結果、痛みが緊張を呼び、緊張が痛みを助長する悪循環を断ち切ることができます。
できるだけ発病してから早い内、遅くとも1か月以内にブロック治療を受けるようにしましょう。
帯状疱疹後神経痛
発症してから時間を経ても効果の高い適切な治療を受けないでいると、湿疹は治っても、ウイルスが活動した部分の神経にはダメージが蓄積し、修復ができない状況になっています。それにより神経は正しい信号を脳に送ることができず、傷んだ神経そのものが痛みを起こすことや、誤った信号により本来傷みを感じない程度のちょっとした刺激で傷みを感じてしまうアロディニアなどの症状を起こします。これにより強い痛みが持続することになる辛い状態です。
帯状疱疹とブロック注射
帯状疱疹は、湿疹という皮膚の症状が目立つため、皮膚の疾患と認識している方もいます。もちろん皮膚もダメージを受けるのですが、それはほとんどのケースで治りやすい症状です。帯状疱疹の本当の怖さは、ウイルスが神経を伝ってその勢力を拡大するため、神経にダメージが与えられることです。それによって、痛みは炎症などを原因とする侵害受容性疼痛から神経障害痛へと変化し、皮膚の症状が治った後も、いつまでも辛い痛みが続いてしまいます。
帯状疱疹の治療は通常、皮膚症状に対する外用薬と、抗ウイルス薬を中心としたものになります。9割程度の患者様はこの治療で、後遺症にならず、痛みも解消していくのですが、残り1割程度の患者様では、皮膚症状の治癒後も神経症状で激しい痛みを感じ続けることになります。この傾向は加齢によってリスクが増し、年齢が上がるほど後遺症に移行する傾向が高くなります。また、帯状疱疹とわかっていても、治療を受けず放置すると同様の症状がおこる可能性が高くなります。
後遺症にならないためにも、ペインクリニックによる神経ブロック治療が有効です。できるだけ早いうちに神経ブロック治療を受けることで、鎮痛効果はもちろん、神経周辺の炎症を鎮め、神経の異常な興奮を抑え、痛みから緊張、緊張から痛みの憎悪という悪循環を断ち切り、痛んだ神経周辺を修復していく効果も期待できます。
また、帯状疱疹後神経痛には、当院で積極的に行っている「パルス高周波」が著効します。
レントゲンを見ながら、帯状疱疹に侵されている神経まで刺入し、投薬+パルス照射します。痛みが出てきたら、なるべく早く治療介入するのがとても重要です。半年以上経過した帯状疱疹後神経痛は、治療効果が得られない可能性があります。帯状疱疹と診断されたら、お早めに当院までご相談ください。
全身すべての部位に
ブロック注射が可能です
神経ブロック療法で行うブロック注射は、全身の神経に適用することができます。痛みを起こしている神経に対してピンポイントで薬液を注入するため、それぞれの部位に適した方法があります。逆に言うと、同じ神経の部位であれば疾患が異なっても同じ注射法が有効であるということです。
部位によって、使用する針の太さ、深さ、薬液の量などがそれぞれ異なっており、正確に注射するために施術する医師の手技が重要な治療法でもあります。
当院では、治療経験豊富なペインクリニックの医師が熟練の手技とCアームという可動式のレントゲン装置でしっかりと確認しながら施術を行いますので、安心してご相談ください。
顔
- 顔面全体の感覚をカバーする三叉神経ブロック(ガッセル神経節ブロック・上顎神経ブロック・下顎神経ブロック)
- 目の周囲・上顎・下顎をつかさどる、眼窩上神経ブロック・眼窩下神経ブロック・おとがい神経ブロック
- 上半身の感覚をつかさどる星状神経節ブロック
首・上肢
- 上半身の感覚をつかさどる星状神経節ブロック
- 頚部の脊髄を護る硬膜の周辺への頚部硬膜外ブロック
- 頚椎から分岐する神経直下への頚部神経根ブロック
- 頚椎関節の痛みに対する、頚部後枝内側枝高周波熱凝固
胸・背中
- 胸椎内の脊髄を護る硬膜周辺への胸部硬膜外ブロック
- 肋骨に沿って胸壁や腹壁の筋肉や皮膚の感覚をつかさどる肋間神経ブロック
- 胸椎から分岐する神経直下への胸部神経根ブロック
腰・下肢
- 腰椎の脊髄を保護する硬膜周辺への腰部硬膜外ブロック
- 腰椎から分岐する神経直下への腰部神経根ブロック
- 腰痛の原因の一つ、後枝内側枝ブロック
- 椎間板性疼痛に対する、椎間板ブロック
- 足底多汗症・血流障害などに対する、腰部交感神経節ブロック
- 癌性疼痛に対する、内臓神経ブロック(エタノール神経破壊)
臀部(おしり)
- 背骨の下に続く仙骨への仙骨硬膜外ブロック
- 太もも裏~足裏の神経への、仙骨神経根ブロック
- 坐骨神経ブロック
- 癌性疼痛に対する不対神経ブロック