- 頚椎椎間板ヘルニアとは
- 椎間板ヘルニアの原因
- 頚椎椎間板ヘルニアの症状
- 頚椎椎間板ヘルニアの検査と診断
- 頚椎椎間板ヘルニアの治療
- 椎間板ヘルニアは
自然治癒する？ - 頚椎椎間板ヘルニアで
やってはいけないこと
頚椎椎間板ヘルニアとは
脊柱を構成する椎骨と椎骨との間には、緩衝材の役目を果たす軟骨があります。この軟骨は「椎間板」と呼ばれ、椎間板が飛び出してしまう疾患が「椎間板ヘルニア」です。椎間板ヘルニアでは、椎間板によって周囲の神経が圧迫され、足腰に痺れや痛みなどの症状が生じます。
椎間板がどこで飛び出したかによって、椎間板ヘルニアは、腰椎椎間板ヘルニア、胸椎椎間板ヘルニア、頚椎椎間板ヘルニアに分類されます。このうち、腕や首、肩甲骨に痛みが発生するのが頚椎椎間板ヘルニアです。進行すると、手足が痺れ、動きも悪くなる場合があります。
高齢者に発症しやすいと思われがちですが、実際には、若年層にも発生します。
椎間板ヘルニアの原因
日常の動作や姿勢が原因で椎間板に負荷がかかることが、椎間板ヘルニアを誘発する一因です。立ったまま前屈する、座るなどの普通の動作でも、椎間板には体重の2.5倍の負荷がかかるとされています。このため、椎間板ヘルニアは、スポーツをする人はもちろんのこと、そうでない人にも起こり得ます。他に、遺伝や加齢も椎間板ヘルニアの発症に影響する要素です。
頚椎椎間板ヘルニアに
なりやすい人
- 激しいスポーツをするか、過去にしていた人
- 重労働に従事している人
- 猫背であるなど、姿勢が悪い人
- 必要以上にストレスがかかっている人
- 椎間板ヘルニアの家族歴がある人
- 30歳以上の人
- 喫煙者
- 外傷（転倒、転落など）が生じた場合
頚椎椎間板ヘルニアの症状
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歩きづらさ
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首から肩甲骨にかけての「こり」や痛み
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上肢の筋力の低下
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四肢の可動域の制限
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手足や手指の痺れ、感覚障害
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細かい作業が困難になること
頚椎椎間板ヘルニアの
検査と診断
上肢の筋力低下や感覚異常の有無を診察で確認します。
頚椎のレントゲン検査も実施し、椎骨同士の間隔や椎骨の状態を確認します。
神経症状が出ている場合、MRI検査によって神経の圧迫度合いを確認します。
ここでとても大事なことは、「椎間板ヘルニアの診断は、MRIを取らないと確定しない」ということです。
レントゲン撮影では、椎間板ヘルニアはわかりません。
当院では必ずMRIを撮影し、どの椎間板にヘルニアがあるのかを確認します。
頚椎椎間板ヘルニアの治療
ペインクリニック以外の一般の治療方法としては、サポーターなどの補助具で保護する、腰椎を安静に保つ、テープ状の鎮痛消炎薬を貼る、鎮痛薬を服用するといった行為が中心になります。
一方、ペインクリニックでは、圧迫によって障害が生じた神経の周辺にお薬を直接注射する神経根ブロック治療を行います。また、パルス高周波・高周波熱凝固を神経ブロックに付加することで、長期的な除痛効果を得られます。
当院の大きな特徴である日帰り手術として、「経皮的椎間板摘出術（DART／DISC-FX）」があります。
注射針の先端から、鉗子というマジックハンドのような機材で、椎間板ヘルニアを摘出します。
治療の流れとしては、
- 神経根ブロック（局所麻酔）
- 神経根ブロック（パルス高周波）
- 経皮的椎間板摘出術（DART／DISC-FX）
- Raczカテーテル（硬膜外癒着剥離術）
- SCS（脊髄刺激療法）
このように、患者様の重症度に応じて、段階的に治療選択ができます。
これがペインクリニック外科の大きな特徴です。
神経ブロック（局所麻酔 or パルス高周波）
麻酔薬によって、圧迫が原因で生じた炎症を改善し、異常に興奮した神経を静めるとともに、辛い痛みなどの症状を緩和します。
ブロック注射を何回か行うと、椎間板の周囲で、神経が興奮して生じた緊張が緩和されて血流も改善します。痛みが原因で緊張し、緊張するから痛みが強くなるという悪循環をなくすこともできます。
また、パルス高周波・高周波熱凝固を神経ブロックに付加することで、長期的な除痛効果を得られます。
薬物療法
筋弛緩薬、非ステロイド系消炎鎮痛剤を使用して痛みを緩和します。
理学療法
痛みが軽減されたら、装置を使用した筋肉の牽引、筋肉の柔軟性と筋力を改善する体操などを行います。
手術療法
日常生活への支障が大きい、保存療法だけでは症状の改善が見られない、麻痺が残るといった場合には、手術を選択肢として視野に入れます。
経皮的椎間板摘出術
（DART/DISC-FX）
経皮的な椎間板ヘルニアの治療法の1つとして、以前から、レーザー椎間板減圧術(PLDD法)が用いられてきました。一方、経皮的椎間板摘出術（DART/DISC-FX）では、PLDD法で対応できない中等度までのヘルニアも治療対象です。DART/DISC-FXは、椎間板性の腰痛や頚部痛に特に有効な方法で、皮膚を切る必要がありません。小鉗子で少量の髄核を機械的に摘出し、ラジオ波で蒸散させて線維輪損傷部を凝縮して、ヘルニアの進行を阻止します。軽度から中等度ヘルニアに効果があり、手術は日帰りで、エリクエンス社のサージマックスという機器を使用して行います。
硬膜外腔癒着剥離術
(Raczカテーテル)
椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症によって硬膜外腔に癒着が生じている場合に、カテーテルという専用の細い管で剥がす治療法です。新しい治療法で、体にメスを入れる必要がありません。米国では1980年代から実施され、日本でも2018年より保険が適用されました。
椎間板ヘルニアは自然治癒する？
椎間板ヘルニアでは、飛び出した椎間板が時間の経過とともに元に戻り、自然に治癒する場合があります。
ただし、症状が3ヶ月以上継続する場合は、飛び出した椎間板が神経を圧迫して炎症が生じている可能性が高く、あまり自然治癒は望めません。
頚椎椎間板ヘルニアでやってはいけないこと
無酸素運動・身体を使いすぎる運動
無酸素運動を避け、楽しみながら継続できるような、少し息があがる程度の有酸素運動を選びましょう。また、身体を使いすぎる激しい運動は、背骨だけでなく全身の負担が大きく、ヘルニアが悪化したり、発症したりする原因になり得ます。このような運動は控えてください。
格闘技・選手同士の身体が接触するスポーツ
アメリカンフットボールやラグビーなど、選手同士の身体が接触するコンタクトスポーツや格闘技は、競技の際に人や物との接触によって強い衝撃が加わるため、背骨への負担が大きくなります。
症状が悪化し、ときには治療が困難にもなり得るため、これらのスポーツは禁止です。
不適切な座り方・猫背
椅子に浅く座って斜めに背もたれに身体をあずけたり、猫背になったりする姿勢は、頚椎に負担をかけ続けることになります。
重要なのは、常に全身を意識して姿勢を保つことです。身体の構造上、首だけを正しい角度にするのは不可能だと理解してください。
適度な運動を生活に取り入れ、全身の筋肉の柔軟性と筋力を維持することも大切です。
転んでしまう
何かで転倒すると、頚椎椎間板ヘルニアが急激に悪化する恐れがあります。
転倒を防止するには、適切な靴を選ぶ、無理な運動をしない、ウォーキングなどの軽い運動でバランス感覚を鍛えて筋力を維持することが大切です。場合によっては、家の中に手すりをつける、歩行時に杖を使うといったことも必要です。